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「知らない人」が相続人に?相続手続きが長期化する3つのリスク

甥・姪といったほとんど会ったこともない親族が突然相続人となり、思いがけない手続きトラブルに発展するケースも少なくありません。今回は、遺言がなかったことで手続きが何ヶ月にも及んだ実際のご相談事例をご紹介します。同じようなご不安をお持ちの方のヒントになれば幸いです。

遺言書がない!相続長期化の原因は?

遺言書がないと、相続においてさまざまなトラブルが発生しやすくなります。

 

今回の事例では、次の3点が心配事となりました。

 

  • 会ったこともない人が相続人になり、話がまとまらない
  • 相続人の1人が、意思確認が難しい状態だった
  • 相続人に80代の高齢者がいた

それでは、詳しく見ていきましょう。

 

「兄弟や甥姪が相続人に」…え?会ったこともない人が?

川田幸雄さん(享年82歳)は、独身でお子さんもおらず、長年一人暮らしをされていました。亡くなったとき、遺言書は見つかりませんでした。

 

そのため、相続人はどうなったかというと…

 

  • 亡くなった兄の子ども3人

 

なんと、相続手続きには5人もの相続人の同意が必要となったのです。

 

「え?この人、誰?」という関係性の方も含まれており、戸惑いや不安の声が上がったのは当然のことでした。

 

相続人に認知症や障がいがあると、手続きはさらに長期化

さらに問題だったのは、相続人の一人である弟が、精神疾患により施設に長期入所していたことです。

 

その方の意思確認ができない場合、家庭裁判所で後見人をつけてから手続きを進める必要があります。

 

今回のケースでも、後見人の申立てから選任、協議書の確認まで半年以上かかりました。

 

その間にも、相続税の申告期限(10ヶ月以内)は迫ってきますので、申告は「未分割」という形で一旦進めることになります。

 

あとから修正申告した場合、税理士や行政書士の費用が二重に発生するケースも少なくありません。

 

遺言がないと、"次の相続"まで重なってしまう恐れも

実はこの手続き中にも、別の心配が生まれました。

 

それは、高齢の相続人がさらに亡くなってしまう「次の相続」の可能性です。

 

例えば、相続人の一人が80代だった場合、半年~1年におよぶ手続きの途中で体調が急変…ということも十分ありえます。

 

そうなると、「亡くなった方の相続」と「相続人の相続」が同時並行になり、相続人の人数も一気に増加。

 

手続きはますます煩雑になります。

 

おひとり様こそ「遺言」で、想いと安心を残してほしい

このように、おひとり様で遺言がない場合、相続は兄弟姉妹や甥姪にまで及び、想像以上に複雑になります。

 

さらに、相続人に認知症などの問題があると、家庭裁判所での後見人選任など、1年近くの時間と多額の費用がかかることも。

 

そしてもう一つ、手続きが長引くことで、次の相続が発生してしまうリスクもあるのです。

 

だからこそ、元気なうちに「自分の思いを形にする遺言書」を準備していただきたいのです。

 

あなたの大切な財産が、想定外の人に渡ったり、家族に迷惑がかかったりするのを防ぐために——。

 

「まだ早い」と思っている今こそ、未来への安心の第一歩を踏み出すタイミングです。