「この家は、できれば元妻の子どもに遺したいと思っているんです。」
ご相談に来られたのは、川越市在住の80代男性。
長年暮らしてきたご自宅の将来について、不安と迷いを抱えながらお話しくださいました。
元妻の子へ相続させたいという想い
ご本人は現在おひとり暮らし。
お子さんはいませんが、過去に結婚歴があり、元妻には前婚で生まれたお子さんがいました。
自宅は元々、結婚当時から生活の拠点としてきた場所。
「血縁はなくても、あの人たちに関係のある家だから」
そんな想いから、元妻の子に自宅を相続させる遺言書を作ることを検討されました。
思いがけない「拒否」という現実
しかし、検討を進める中で状況は変わります。
連絡を取った元妻の子から返ってきたのは、相続を望まないという明確な意思でした。
理由は詳しく語られませんでしたが、
ご本人にとっては大きな衝撃だったようです。
「迷惑をかけたくない」
「嫌な思いをさせるくらいなら、やめた方がいい」
そう話される姿からは、相手を思いやる気持ちと同時に、
ご自身の中で整理しきれない複雑な感情も感じ取れました。
甥姪への相続にも、気持ちは向かなかった
法定相続人は甥や姪にあたりますが、
ご本人は「関係が薄い」「自分の意思とは違う」と感じておられました。
また、遺贈寄付という選択肢についても一緒に検討しましたが、
「頭では分かるけれど、気持ちが追いつかない」
と、結論を出すには至りませんでした。
専門家としての葛藤と、ひとつの答え
私たち専門家の立場としては、
遺言書を作成しておくことで、ご本人の意思を形にし、
その後の不安を減らせるのではないか、という思いがあります。
しかし、遺言書を作るかどうかを決めるのは、あくまでご本人です。
何度も話し合いを重ねた結果、今回は
「今は遺言書を作らない」
という結論に至りました。
「決めない」という選択も、尊重されるべきもの
終活や相続の支援というと、
「必ず何かを決めなければならない」と思われがちです。
けれど実際には、
気持ちが整わないまま無理に決めることが、必ずしも正解とは限りません。
この方にとって今大切なのは、
・安心して暮らせること
・必要な支援が受けられる環境にいること
・いつでも相談できる相手がいること
そうした土台を整えながら、
「また考えたくなったら、いつでも話せる」
その状態を保つことだと感じました。
私たちの役割は「決めさせること」ではない
今回の事例を通して、改めて感じたのは、
専門家の役割は答えを押し付けることではなく、寄り添い続けることだという点です。
決断を急がせない。
揺れる気持ちを否定しない。
そして、必要なときに、また一緒に考える。
その姿勢こそが、
「その人らしい最期」に繋がる支援なのだと、教えられた事例でした。
上記サポート事例は、当社グループ会社の株式会社PSE資産プランニングが賛助会員として参画している、一般社団法人 NIPPON終活サポートセンターの身元引受契約に基づく対応事例です。
株式会社PSE資産プランニングは、一般社団法人 NIPPON終活サポートセンターの「埼玉鶴ヶ島支部」として活動しております。
一般社団法人 NIPPON終活サポートセンター
